概要
今回はカスタムパーツインプレ、オーリンズのリアサス編です。
(元の記事は数年前のものでこの記事はリメイク版です。現在はバイク、サス共に新品購入困難です。高価なサスとは何が違うのか?を感じて頂ければ幸いです。)
オーリンズを装着してあるのはXR100モタードです。
実はこれ、装着したのはもう何年も前です。
XR100モタード用というのはラインナップに無かったのでエイプ用を買いました。
エイプ用なのでXR100モタードのノーマルサスと比べると取付け長が5ミリ長いです。
そのまま付ければリアが高めの尻上がりの姿勢になる訳ですが、街乗りとサーキットで使う予定だったので、
多少ハンドリングが切れ込むようになっても良く曲がる方が良いと思って、その後の微調整はセッティングで何とかなるだろ、と取付けました。
ノーマルで不満だった事
ノーマルサスは街乗りしか考えていないフニャフニャサスだったので、当時、サーキットが大好きだった私は、タ◯◯◯のリアサスを入れたんです。
確か1万円位だったかな。
そしたら、◯ケ◯◯はイニシャル調整はあるけど、ダンパー調整が無いのでサーキットには完全に役不足!
◯◯ガ◯は、街乗りしかしないけど、もう少しノーマルのフニャフニャ感を何とかしたい、という体重の重い人向けです。
私は90キロですが、街乗りだけならノーマルで良いと思っています。
因みに◯◯◯ワが駄目なメーカーだと言っている訳じゃありません。サーキットで満足出来るようなサスが一万円で作れる訳がありませんからね。用途が違うというだけです。
サーキットではダンパー、特にリバンウド側の減衰が弱過ぎるとフルバンク中にリアが滑った時の滑り方が、一気にツルッと滑ってしまい、ニュルニュルとケツが沈んでいくような滑り方にならないので、もっと本格的なサスを探しました。
候補に上がったのはオーリンズとアイファクトリー。
アイファクトリーというのはレース屋です。レース屋と言っても普通のバイクも売ってるみたいですが。
当時の値段はオーリンズが約12万位、アイファクトリーが約10万位だったと思います。今はオーリンズでも車高調無しの廉価版もあるみたいですね。
買ったのは高い方です。オーリンズを選んだ一番の理由は、補修パーツが何年あるか?です。単純に大きな会社の方が多くの補修パーツを長年ストックする余裕もあるだろう、と思ったので。
高額なパーツを付けた以上、長く使い続けたいですからね。
(追記:購入から20年くらい経った今でもオーバーホール可能でした)
アイファクトリーも実績あるレース屋なので気になりますが詳しく知りません。
理想のサスペンション
私には理想のサスのイメージがあります。若い頃に乗ってたHRCのRS250という2スト250のレーサーです。
主に筑波サーキット、たまに練習として都民モーターランドや山梨スポーツランドやエビスサーキットを走ってました。
同じコースで他のバイク(レーサーレプリカ等)と比べると”タイヤが路面に吸い付いてる感じ”がハンパない!
感覚的には”ほとんど揺れない”と言うか”タイヤが磁石のように路面に吸い付いてる”ような感じ。
スリックタイヤですからタイヤの性能差もあると思いますが印象としては、裸足で歩いてるように路面状況が分かる!
もしナンバーが付いてたら、これでツーリング行きたい、と思っちゃうほど。このサスの気持ち良さはモトクロッサー以上です。
以下、2スト500モトクロッサーのモタード仕様(公道可のハイグリップタイヤ)で同じ場所を走った時との比較です。
モトクロッサーのサスも市販車に比べたら良く吸い付きますが、ロードレーサーはレベルが違いました。
例えばコーナー途中で路面が少しウネってるとか、カントが変わるポイントとか、滑りやすい場所ってありますよね。
そんな時、モトクロッサーが
ズリッズリズリッズリリン
と不規則な滑り方をするのに対してロードレーサーは
ズズズズズ〜
と一定の滑り方をしてくれるのでコントロールしやすいし怖くない!
もちろんタイヤもフレームも違うのでサスだけの差ではありませんが、
「こんな足周りでツーリングや通勤してみたい!」
と思いました。タイヤが常に一定のグリップをしてくれる安心感という物を初めて味わいました。
おそらく荷重が一定であればサスがスムーズに動いてタイヤと路面の接地面積が殆ど変わらないんでしょう。
スムーズな動きを邪魔する1番の敵はフリクションです。
ダストシールは内部に砂埃が入らないようにする為にある程度きつく締め付けてダンパーロッドに密着させる必要があります。
これはフロントフォークでもキャリパーピストンでも同じです。
ダストシールの要らないロードレーサーだからこそ、そこまでフリクションを減らせるんですけどね。
耐久性(耐候性と言った方が近いかも)を捨ててでもコントロール性能(つまり勝つ事)を優先したロードレーサーだから出来る事です。
モトクロッサーや公道用車両でダストシールを外すなんて実用上不可能です。
サスの性能というのは路面の凸凹に対して、どれだけ素早く動いて、その後揺り返し無くピタリと止まるか?だと思います。
これが出来るサスほど「路面に吸い付く感じ」が出せるんだと思います。その為にフリクションを減らしたいんです。
ただしこれは"熱い走り"を求めた場合です。
のんびりツーリングの場合は、ある程度ボヨンボヨンしてくれた方が楽しい場合もあるので、それは別の記事に書きます。
こんなのとか
こんなのとかね。
オーリンズは理想に近付けるか?
そんなこんなで、理想サスのイメージを求めて買ったオーリンズ。
結論から言うとロードレーサーのレベルには届きませんが市販モトクロッサーくらいのレベルにはなったと思います。
リアサスだけ良くなったのでフロントは追いついてないですが、気持ち良さに重要なのはトラクション旋回時のコントロール性能です。
トラクション旋回とはこんなイメージです。
- コーナーが迫りブレーキングポイントが近づく
- フルブレーキでフロントがグンと沈み込み
- リアタイヤが僅かに浮くのを感じながら矢継ぎ早にシフトダウン
- ブレーキレバーを緩めながら無重力になったイン側ステップに着地するかのように一気にバンキング
- アスファルトが目の前まで近づき、膝と足の小指側のバンクセンサーにカリカリとアスファルトの感触
- 外足をステップに踏ん張り、押し付けた内腿とケツでリアタイヤと会話しながら
- ケツの肉とリアタイヤが潰れる感触と共にスロットルを開け始め
- コーナー出口が見え始める前にスロットル全開
- まるでウィリー初期のスロットルに連動してフロントが持ち上がるような感覚と
- アクセルターンの時の後ろ半分が外側にズレて行く感覚を同時に感じて
- ケツがリアタイヤに乗っかって一輪車でコーナーから立ち上がって行くような感覚
後半のスロットルを開けている時がトラクション旋回のパートです。
ここまで攻め込むのはサーキットに行った時だけですが、公道の速度域でも曲がる時にトラクション旋回するのは同じです。
このトラクション旋回の気持ち良さを毎日(近所で)手軽に楽しみたい、という理想があります。
その為に必要だったのが路面に吸い付くようなサスペンションと近所の一般道の速度域に合った小排気量だったんです。
路面に吸い付くってどゆ事?
あいつとララバイの一幕です。ディーブというチューナーがチューンしたカタナに乗った研二くんは「路面に吸い付くこの感じ!」と言ってましたね。
あいつとララバイをAmazonで見てみる↓
2輪・4輪雑誌等でもよく見るこの「タイヤが路面に吸い付く」という表現、あくまで比喩なんですが、私がレーサーに乗って感じたのは、
- 車体がガタガタ揺れない(市販車と比較して)
- 荷重移動やブレーキやトラクションの効き方がずっと一定
- どのくらいで滑るか?が分かりやすい
という感覚の事じゃないかと思います。
または「タイヤの潰れる量とケツの肉の潰れる量が常に同じ」とでも言いますか。
その為には、路面がデコボコしていても、それをサスペンションで完全に吸収して人間に伝えない。
と同時にバネ上重量(車体と人間)によって潰れるタイヤの潰れ方(接地面積)を常に一定に保つ(デコボコ路面でも)・・・
という、とんでもなく難しい無理難題を突き付けられるのがサスペンションです。普通に考えたら不可能です。
それを少しでも理想に近付けようとすればレーサーのようにダストシールを外してフリクションを限界まで減らす!という禁じ手を使うしかなくなります。
でもそんな事したらすぐに砂埃を噛んでサスが抜けちゃいますからね。レーサーの場合はすぐにオーバーホールして対応します。
どんなに面倒臭くても金が掛かっても勝つ為に必要なら!それがレーサーです。走ってる時間よりバラしてる時間の方が長いのは日常です。
でも公道用バイクではそんな事出来ません。限界性能を犠牲にしてでも耐久性を上げます。ツーリングの度にオーバーホールなんて出来ませんからね。
そういう限られた条件の中で高性能を求められるのがスペシャルパーツメーカーです。そんな無理難題をクリアするんだから高価なのも納得でしょう。
となると、純正パーツと同じ金額で純正パーツを超える性能なんて出せる訳ないですね。何かを特化させるしかないでしょう。硬いだけ、とかね。
まぁそれを承知で自分の使い方に合ってるなら、それでも良いと思います。
難しいのはフリクションを減らしてスムーズに動かし尚且つダンピングはしっかり効いてるって事なので
私の楽しみであるトラクション旋回は不経済な趣味ですね^^;
フロントはどうする?
オーリンズ装着によってリアの限界域でのコントロール性は格段に向上しました。
公道なら安全性能にも繋がります。雨のマンホールとかね。
本来ならフロント周りも高性能なフロントフォークに交換したい所ですが、何用を流用する?という時点で大掛かりになり過ぎるし、
リアに比べるとコスパが低い、つまり何十万も掛かる割に効果が少ない・・・という事でウチのXRではフォークはノーマルのまま、セッティングを煮詰めています。
フロント周りの詳細はこちらを参照して下さい↓
これでフロント周りの剛性が上がるのでフルブレーキでリアが浮くかどうかのギリギリの領域でのコントロール性が向上します。
ジャックナイフ遊びとかも楽しくなるし。
オーリンズの長所と短所
先に短所から言えば「高い!」以外の短所はありません。
ノーマルみたいにボヨンボヨンしたければセッティングを緩めにすれば良いし、限界走行は本領発揮だし。
オーバーホールすれば私のように20年使えるし。
もっとも私のように
- 小排気量車の方が楽しい
- 小排気量車の中で熱い走りを楽しめる車種はこれだ
というベクトルがある程度定まっていないと高価なパーツに躊躇する気持ちは良く分かります。
次に長所、というか私が使ってみて「これはノーマルや安価なサスじゃ無理だな」と思った点です。
オーリンズの良い所、まずひとつは、セッティングの幅が広くて、その違いが分かりやすい所です。
サーキットを走る時は車高上げて伸びダンパー強くして旋回性とリアが滑った時のコントール性を重視したセッティングにします。
伸びダンパーを効かせるとリアがツルっと滑らずニュルニュル滑るんですよ。
そしてリアの車高を上げるとコーナー進入で寝かした瞬間、フロントがスパッとインに入ります。
サーキットで超本気モードの時はリンクも変えて超旋回仕様にする事もあります。
リンク交換なんて慣れちゃえば鉄カブ(チューブタイヤ)のパンク修理より簡単です。
レバー比が変わり、フルバンクした時にアンチスクワットが良く効くようになり、NSR軍団と同等レベルで曲がれるようになります。
ただ、このまま街乗りすると交差点を曲がる時にフロントが切れ込み過ぎたり、車線変更で切り返す時に、リーンが重く感じたりします。
なので街乗りのんびりモードの時はセッティングを戻します。
これがセッティング変更だけで対処出来るのが超便利です。
因みにジムカーナの時は街乗りとサーキットの中間くらいのセッティングにします。
ウィリー練習の時はリアの車高を下げて、フロントは底突きしないよう少し硬めに。
という感じで、何処をどう走るか?によってセッティングを変えて遊んでいます。
調整範囲はイニシャルが無段階、車高調整は5ミリなのでリアアクスルで10~15ミリ位、ダンピングはコンプ側20段、リバンウド側30段あります。
買ってから走行2万キロ位は性能劣化は感じませんでした。
2万キロ位の時にオーバーホールしましたが、オーリンズならオーバーホール時についでにモディファイも出来るので、ストロークの奥で踏ん張りが強くなるようにダンピング特性を変えてもらいました。
ダンピング特性なのて分かるの?と思いましたか?
良く動くサス、つまりフリクションの少ないサスに乗ると、違いが分かるんです。これも高性能サスの長所です。
以前、ゼファーに乗っていた時に付いていたリアサスは、ダンパーはダイヤル式で確か5段階位でカチカチと回すタイプ。
そして1クリック毎の差がかなり大きい。
ピンと来ましたか?
フリクションの大きいサスは1クリック毎の差を大きくしないと、フリクションに阻まれて違いが分からないんです。
フリクションの少ないサスなら少し変えただけで、その違いが分かります。
値段の高いサスは、そこが違います。
その効果がRSで私が感動した
“路面に吸い付く感じ”
です。
今回のオーリンズは、あくまで公道用として最低限の耐久性を持たせる必要があったのでしょう。
ロードレーサーほどのローフリクションは実現出来なかったようですが、耐久性との両立を思えば、良く出来てると思います。
ただし、公道をのんびりと走るだけの用途の人ならノーマルサスでも良いと思います。
例えばモンキーとかカブとか、車種によってはダンパーが殆ど効いてなくて、小さなギャップに乗っただけでボヨンボヨン揺れるようなノーマルサスもあります。
でも限界走行しないなら、フルバンクしてタイヤの端っこを潰しまくって接地面積の変化がスライドコントロールに大きな影響を及ぼすような走り方をしないなら・・・
ダンパーなんて弱い方が楽しいんです。
ダンパーを効かせると少なからず、ケツに伝わって来る感触が硬くゴツゴツした感じになります。速度域にもよりますが。
このゴツゴツが疲労感や腰痛の原因になる事もあります。
そして切り返しが重くなり、まるで車重の重いバイクに乗り換えたかのような感触になります。
何故かと言うと
リーンする時、例え無意識でもイン側ステップに荷重します。
その時、足からステップに下に押す力が加わり、サスがすぐに縮んでタイヤをアウト側に押し出し、重心つまりエンジン周辺をイン側に倒し混むまで下に押す力を蓄え続けてくれています。
サスがそういうサポートをしてくれてるから、軽い力でリーン出来て車重が軽く感じるんです。
限界走行の場合は最初の足からの入力自体が極端に強く、入力時間も長いのでダンパーが弱いと腰砕け感が出てしまいます。
と同時に車重が重いようなリーンが遅いような感覚はありますが、スポーツ走行するなら、それを差し引いても揺り戻しが少なく、スライドコントロールし易い方を優先します。
でものんびりとツーリングするなら、楽しさが最優先です。
その為にダンパーもイニシャルも必要最小限まで弱く、少ない入力でもバイクが軽く動いてくれるセッティングの方が楽しいという事です。
このオーリンズの場合は
柔らかくも固くも出来ます。
自分好みにモディファイする事も出来ます。
車高調でハンドリング特性を変化させられます。
でも全て、スポーツ走行寄りにも振れる、両立出来るという意味で、です。
それにリアを変えたらフロントも変えないとバランスがおかしくなる事もあります。
また、キャブセッティングとかと違って、足周りのセッティングには、これが正解、というゴールがありません。
場所やペースによってベストセッティングが刻々と変わるからです。
逆に言えば、いつまでも自分のバイクの変化を楽しみ続けられるという事でもありますが、
例えレース経験者でも1発でベストセッティングなんて出ませんから、
しばらくは気持ち良いセッティングが見つかるまで何回もアジャスターをカチカチといじくる日々になります。
まぁ慣れれば苦じゃないですけどね。
何処をどう変えると走りがどう変わるのか?
慣れれば慣れるほど、バイクが自分の手足になって来るような感覚は何とも言えない幸せな時間です。
最近流行りの電子制御のサスはスイッチひとつで全てを変えられて便利だとは思います。
その内、アプリとかで現場で一瞬にして細かいセッティングまで出来るようになるんでしょうね。
そこまで出来れば楽しそうです。
ただ、現時点では
どれだけ各部を個々に弄れるか?
電子機器を増やして車重が重くならないか?
についてはアナログなサスの方がまだ先を行ってます。
特に車重が重くなると小型バイクの長所をスポイルしてしまいます。
手を真っ黒にしてサスをいじくるのは最初は面倒臭いかも知れませんが、その手間暇を掛ける時間も贅沢な趣味の時間ですからね。
バイク乗りは、敢えて不便を高額で買うような不憫な生き物です。
“不便だからこそ楽しい事もある”
と思ってる人も多いんじゃないでしょうか。だって便利なだけならバイクよりスクーターに乗りますよね。
GTRよりハチロクが楽しいと思えるような人もね。
この贅沢な自己満足にどこまで没頭出来るか?この上なく幸せな時間ですね。
結局は「高い物は良い」んじゃなくて「自分の用途に合ってる物は良い」って事ですね。
自己満足も立派な用途です。
それじゃ今回はこの辺で。
2024年5月追記
2024年、オーリンズ公式のリアサスのラインナップは125cc以下では
- ホンダ・モンキー125、モンキー125ダンパー調整無し、モンキー50、ダックス125、ハンターカブ125、MSX125(グロム)、NSR-mini
- ヤマハ・XSR155(125にも使える?)
- スズキ・小型車用無し
- カワサキ・Z125PRO、KSR110
があるようです。青文字になっている車種はAmazonリンクになっています。タップしてみて下さい。
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