愛車紹介:ホンダドリーム50。音・想い・昔の乗り味を愉しむバイク

ドリーム50

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古いバイクへの興味

バイク紹介第3弾はホンダドリーム50です。

モンキーはのんびりトコトコが幸せなバイク、XR100モタードは曲がる事や前後輪を上げる事が面白いバイクです。

ドリーム50は見て触って鑑賞する愉しみと、ただスロットルを開けるだけでもドキドキできる何かがあるバイクです。

ドリーム50の仕様

まずは私のドリーム50の仕様を簡単に解説しておきます。

武川のボアアップキットで89ccになっています。

シリンダーヘッドはノーマルなので高回転域でのパンチ力はそこそこです。ヘッドがノーマルなら50ccの方がよく回りますが高回転を常用する事になるので、回転によって擦れるパーツの寿命が著しく短くなります。

ボアアップによって超高回転というドリーム50の特徴は失われますが、回さなくてもある程度の高速巡航が可能になります。エンジンの耐久性や街乗りでのトルクを重視した仕様です。

キャブ は京浜のPE24です。PEキャブはPDやPCに比べるとセッティングに気難しい部分もありますが、セッティングが決まれば高回転で良く伸びる気持ちの良いキャブ です。後述するCRキャブの特性に少し似ている気がします。

速さを求めるならフラットトルクの方がコーナー立ち上がりで扱いやすいですが官能的なフィーリングを重視するなら乗ってて面白いキャブです。

元々、PEキャブは2スト用キャブ です。これを4ストに付けて街乗りでの扱い易さを引き出すには吸入負圧のコントロールがポイントです。

そこで重視したのがスロットルバルブのカッタウェイです。これで街乗りの際のスロットル開度が少ない時のスムーズさを調整しました。

それに併せてJNのストレート径を調整すると街乗りで扱い易いトルクを得る事が出来ました。

マフラーもエンジンに併せて武川のマフラーです。音も良いしパワーも出ています。リアサスの記事では武川をディスったりしましたが、武川のエンジンパーツはとても良い性能だと思います。

この仕様で平地無風の最高速は大体100キロ前後くらいです。となるとパワーは多分10馬力くらいじゃないかな?と思います。

ドリーム50の乗り味

このドリーム50(89cc)は遊べる程度にレーシングエンジンの扱い難さのあるエンジンです。

4000〜5000回転以下の低回転ではスロットルをガバ開けするとグモモ・・と息つきしてスロットルに付いて来ません。

この回転域では回転上昇に合わせてスロットルをゆっくり捻ってやる必要があります。

これがレーサーならもっとフライホイールを軽くして瞬時に高回転まで回し、半クラを使って回転を落とさなければ良いのですが、サーキットだから出来る事です。

公道用のバイクでは、ある程度フライホイールが重くないと簡単にエンジンストールしてしまいゼロ発進が困難になります。

この武川のキットは、ゆっくり開けさえすれば低回転でクルージングする事も出来、高回転では気持ち良く伸び上がるような加速をみせる絶妙な設定になっていると思います。

前述したように50ccや89ccのヘッドも変えた物と比べると超高回転までは回りません。でもPEキャブの特性も手伝って回転上昇する過程が面白いエンジンになったと思います。

フライホイールを極限まで軽くした本物のレーシングエンジンと比べればレスポンスは遅いですが「公道を走る為に面白さを殺さずにどう妥協するか?」を武川なりに考えた良いバランスだと思います。

そしてもうひとつ。乗車時の重心位置です。昔のバイクは最新のバイクと比べると、タンクが長くシートが後方に付いています。

エンジンよりむしろ、後方荷重による操縦性の方が今のバイクと大きく違うと思います。私がドリーム50を買う時にエンジン以上に興味があった部分です。詳しくは後述します。

昔のレーシングマシン

ドリーム50は1962年に発売されたホンダの市販レーサーCR110を元ネタにした言わばレーサーレプリカです。が・・・

https://www.honda.co.jp/HRC/products/machine/dream50r/

そのレプリカを元にして今度はHRCが市販レーサー、ドリーム50Rやドリーム50TTを作ってしまう!という逆転現象まで発生しました。

50TTに至ってはシリンダーヘッドをシングルポートに作り直したり、昔のレーシングキャブレターの代名詞CRキャブを入れたり、タンクをアルミで作り直したり、まぁやりたい放題です!ホンダのエンジニアはさぞや楽しかったでしょうね(^^)

ちょっとだけ余計な話を。

CRキャブは私も空冷四発に付けた事があります。性能はFCRには及びませんでしたが、性能だけじゃない気持ち良さがあるキャブでした。

https://www.webike.net/sd/1902596/

背圧バランスバルブの音がカチャカチャうるさいFCRに対してCRはスロットルを捻ると、シュゴ〜シュゴ〜とファンネルから空気を吸い込む吸気音が響き渡ります。

FCRは加速ポンプの恩恵で下からトルクや付きの良さがあるのでCRより低い回転からでもフラットトルクでコーナーを立ち上がる事が出来ます。

言い換えれば、回さないとトルクが出ないCRの特性は、高回転まで回した時にキイィ〜ンと一気にカムに乗って加速する感覚が余計に気持ち良く感じられます。

速いのはFCRですが、2ストが好きな人や高回転で伸びるフィーリングが好きな人はCRの方が面白いと思います。

https://www.webike.net/sd/1902596/

そして見惚れてしまいそうなスムーズボア。これがあまりに美しくてCRキャブを買った日は一緒に寝ました^^;

今ウチにあるキャブでは同じØ24でもヨシムラのTM-MJN24より

京浜PE24の方がそういう面白さがあると思います。あくまで面白さです。速さじゃなく。

想像ですがTMはフラットバルブなので負圧が強く、更にMJNで霧化特性が良いのでPEやCRより実用パワーバンドが広くフラットトルクなんじゃないか?

その点、PEやCR、特にCRはFCRをも上回るスムーズボアなので吸入負圧がバランスする高回転域で一気に爆発するフィーリングが官能的に感じるのかな?と思います。

すいません。キャブフェチなので話が脱線しました^^;

昔の足周り

では話を戻してドリーム50です。CR110とは異なり、

現代風にディスクブレーキを付けたりフロントフォークを今どきのスプリング内蔵タイプのテレスコピックにしたり等、細かな違いは色々ありますが、乗り味は最近の便利で速いバイクとは大分違います。

まずは元ネタとなりドリーム50TTのネーミングの由来ともなった1960年前後辺りのマン島TTレースですが、さすがに私も生まれていません。

今のレースとどう違うんだろう?と興味が沸いたのでググってみました。そして見つけた当時の映像がこちら↓

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最近のレース映像を見慣れていると色々と違いますね。

バンク角は浅いし、ブレーキングでリアは浮かないし、立ち上がりでフロントアップしないし・・・

でも、走っているのは当時のトップライダーですからね。グリップしない路面とタイヤ、効かないブレーキ、パワーのないエンジン、よれるフレームで限界まで攻めてる、という事でしょう。

ドリーム50に乗ると私程度の乗り手でもそれを感じる事が出来ます。1番の違いはタイヤとポジションだと思います。

最新のロードバイク、極論すればロードレーサーはコーナー進入(コーナー前半)では

  • リアが浮く程のフルブレーキでフロント荷重
  • フォークが縮んだままイン側ステップを蹴り込むようにケツを前内方にずらして一気にバンキング
  • 路面に吸い付くようなフロントのグリップ力を回頭性に変換して一気にヨーイングを発生させる

これをタイミングやリズム良くこなした時にコーナー進入が気持ち良くなります。よく「コーナーは突っ込み勝負」なんて聞きますが、

あれはブレーキを我慢するチキンレースの事ではありません。ヨーイングまでの一連の動作をリズム良く決められるか?を言っていると思います。

ただし、これが出来るのは最新のハイグリップタイヤとそれに負けない高剛性なフォークとフレームがあるからです。

当時のバイクにそんな物はありません。なら、どうやって曲がるのか?

ドリームに乗れば乗るほど、だんだん分かって来ました。分かって来た、というより思い出したと言うか。

フロント荷重なんて知らなかった頃の乗り方。イメージとしては、子供の頃、散々遊んだママチャリでのブレーキターンです。

サドルに荷重しながらペダルを踏ん張って、ブレーキを思い切り掛けながらチャリを思い切り寝かせる、あの感覚です。

そう言えば、スーパーカブの乗り方にも似てますね。

スーパーカブ、特に鉄カブ(旧型の90・70・50等)はボトルリンク式と言って、フロントブレーキを掛けるとフロントが持ち上がって来るので初めて乗るとビックリします。

コーナー進入でフロントを沈ませてフロント荷重、なんて乗り方は不可能です。

詳しくは次回のスーパーカブの回で話しますが、最近のバイクよりブレーキはリアを多めに減速と姿勢安定の為に使います。

ドリーム50はフロントフォークがテレスコピック式なのでカブほどではありませんが、フロント荷重に頼った曲げ方は出来ません。

ブレーキできっちり減速して寝かし込むと同時にスロットルを開け気味でリアを主体にフロントを追従させる方が安定します。

ハングオンも出来ない事はありませんが、ケツの移動量を少なめにしてリーンウィズに近い荷重の掛け方にした方がアンダーが出難いようです。

慣れるまでは乗り方の違いに戸惑いますが慣れてしまえば、これはこれで面白いですね。当時のライダーが何であんなフォームで乗っていたのか、よく分かります。

荷重移動を大きくした所でタイヤがもたない、だから人間とバイクの重心を近付けて少ない荷重移動で運動性を上げようとした。

人間とバイクが一緒に動くような乗り方、それがコツなのかな?と思いました。

まとめ

ここからはカーグラフィックTVエンディング↓でも聴きながらお読み下さい。

カーグラ エンディング
カーグラフィック TV エンディングテーマ

本田宗一郎が「マン島TTに出るぞ!」と言ったのは1950年代です。50年代と言えば・・・

1952年にカブのF型を出して間もない頃です。

2サイクル単気筒で1馬力。つまりエンジンとしては最も単純な構造のバイク・・・というより見たままの原動機付き自転車を作ったばかりでした。

その僅か2年後に「世界最高峰のマン島TTレースに出る⁉︎」と聞いたホンダの社員は耳を疑った事でしょう。

しかし、それから5年後の1959年には本当にマン島TTレースに出場します。この5年間ホンダの社員はさぞや忙しかったでしょうね^^;

そしてさらに2年。1961年にはホンダのマシンが1位から5位までを独占して優勝するという快挙を成し遂げます。

その頃のマシンがこのRC162です。

遂に本田宗一郎の夢とホンダ社員の汗が結実したマシンです。ライダーはあの高橋国光さんです。国さん、ご冥福をお祈りします。

ホンダが世界を相手に羽ばたき始めた時代、世界GPに50ccクラスが新設され、ホンダはワークスレーサーRC110を送り込みます。

その市販タイプとして発売されたのが、CR110カブレーシングでした。

50ccの小さなエンジンにDOHC4バルブと言う、当時としては考えられない豪華機構を盛り込んだこのエンジンは、精密機械と呼ばれました。

ちなみに「カブ」という名称は今でこそ配達バイクの代名詞ですが、当時はホンダの50ccと言えばカブ、というイメージだった事が元になっているようです。

本田宗一郎が世界を見上げて挑戦し始めた時代のバイク達。

最新のバイクと比べれば性能で勝てる所はありません。

レースで勝つ事が全てのプロレーサーなら性能が最優先ですが・・・

普通のバイク乗りの私達には、もっと大事な物があるような気がします。

それが何か?は人それぞれですが・・・

ドリーム50には、忘れかけていた何か?が詰まっている気がします。

次回はスーパーカブ70の紹介です。お楽しみに(^^)/~~~

書籍の紹介

ホンダ オリジン THE HONDA ORIGIN (1945-1960s) 1950年代ホンダ車の、世界屈指のコレクターである君和田氏の全面協力のもと、メーカー自身すら所有していない車両も含むレアな初期ホンダ車45台を紹介。 ↓

ご迷惑をおかけしています!

HONDA MOTORCYCLE THE DREAM MAKERS
ホンダ二輪の70年「不滅の魂とゆめ」    最前線にいるエンジニア達の想いと言葉を重ね合わせて、ホンダ二輪の現在と未来を探る。 ↓

ご迷惑をおかけしています!

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