概要
今回はモンキー(昔のキャブの50cc)の乗り味の話です。
以前、モンキーで深夜の東京都心を散歩した時↓
のように、モンキーには他のバイクには無い、不思議な感覚になる事が度々あります。この感覚はどこから来るのか?をエンジン・車体の面から考えてみます。
ずっと乗っていたくなる
ずっと乗っていたくなる、と言えば月並みな表現ですが、どれだけ乗ってても飽きないか?まだまだ走り続けたくなるか?
という気分になる事が、今まで乗ったどんなバイクよりも圧倒的に多いのがモンキーです。今まで乗ったバイクの中にはビッグシングルやハーレーや2スト500も含まれます。
もちろん、遅さではモンキーがダントツで1位です。スーパーカブは毎日乗る人の為の完成された素晴らしい機械ですが、
ビジバイってのは違う見方をすれば、乗りたくない日でも乗らなきゃいけないから、そこを機械がサポートしてくれてる、とも言えます。
体調や天候が悪くても”乗れるバイク”と”乗りたくなるバイク”は違います。
モンキーの場合、”ずっと乗っていたくなるバイク”です。
他のバイクに乗ってると見えない景色がモンキーに乗ってると見えます。遅いからだろ?と言われればその通りなんですが、それだけじゃない気がします。
他のどんなバイクよりも気楽なんです。リラックス出来ると言ってもいいかも。
遅いエンジンは長所⁉︎
そう感じる要素はいくつかありますが、遅さも重要な要素です。
単にパワーが無くて遅いだけ、というエンジンなら焦れったくてすぐに飽きちゃうでしょうね。
モンキーの横型エンジンは、単気筒エンジンのメリットを見事に引き出してると思います。単気筒は元々、高回転が苦手です。
なら無理して回転馬力を稼ぐより単気筒の長所を伸ばした方が、理に適ってるって事でしょうね。
ロングストローク化して、フライホイールマスを重くして、低中回転域でのトルクと粘りを増やし、回さずに重いフライホイールに乗せてゆっくりなのに安定して回転するエンジン。
これを50ccという小さい排気量でやった事によって、すぐに高速域に達しないという短所が、空いてる道では長所となり、単気筒ならではの”トトトト”という粘りを感じながらの加速がずっと続きます。
単気筒の代名詞SR500にもカンリンのヘビーウェイトフライホイール&ロングストローククランクのキットがありますが、考え方はそれと同じです。
ハーレーで例えばパンヘッドあたりかな。パンヘッドのエンジンは最近のエボやツインカムと比べると「ドッコンドッコン」とゆっくり粘り強く回る気がします。
借りて乗った事がある程度なので詳しくはないんですが、フライホイールの重さや大きく曲がった吸排気ポート(抵抗が大きい)等がゆっくりと粘るように回る味を出してるんじゃないかと思います。
フライホイールが重ければレスポンスは遅いですが、抵抗(混合気の圧縮行程)に負けずに回り続ける慣性力が大きくなります。
レーシングエンジンとは対照的な考え方です。
レーシングエンジンはスロットルを僅かに捻った瞬間、電気式タコメーターの針がパン!と跳ね上がるような目の覚めるレスポンスです。
フライホイールやクランク等の回転部分を限界まで軽くしてあるからです。圧縮する為の慣性力は高回転による回転力で補います。
なので低回転では不安定になります。私が20代の頃乗っていた2スト市販レーサーRS250にはアイドリング機構すら付いていませんでした。
4ストなら2ストよりは安定しますが古い4ストレーサーの中にはアイドリング回転数が1万回転なんてとんでもないエンジンもあったようです。
サーキットと公道では何を優先するか?が全く違うという事です。サーキットならレスポンスは速い程良いし、パワーの為なら低回転での安定性も要りません。
でも、サーキットとは対照的な走り方・・・例えば、のどかな田舎道をスロットル一定でトコトコ走るような走り方なら
- 低回転での粘り特性に優れたロングストローク
- 低回転でも慣性力を生み出せる重いフライホイール
- 低回転で適度な吸入負圧がメインノズルに掛かる小さめのキャブ
- 低回転での少ない気流の流速を維持できる長く細めのインマニ
他にもありますが、トコトコが気持ち良いエンジンはこういうエンジンだと思います。
回らない、レスポンスが遅い、吹け上がりが重い・・・
そんなエンジンはバイクに速さを求めるなら短所ですが、走り方によってはそれが長所になります。モンキーとパンヘッドは似てると思います。
モンキーの低回転での粘り強さは特筆ものです。50ccの癖にアイドリング発進できます!これ、凄いですよ。
こんなに粘るのに50ccなのでトップギア低回転では殆ど加速しません。いつまでトコトコトコトコしてます。可愛らしい鼓動を奏でながら。
モンキーなら田舎道のトコトコ散歩が最高の贅沢な時間になります。
ソファーに座ってるみたいな◯◯
トコトコしてる時の気持ち良さに貢献しているのはエンジンだけじゃありません。身体のリラックスに貢献してるポジションです。ソファーに座ってる時みたいな手足の力が抜ける位置関係です。
車格が大きいと、どうしてもハンドルが遠くなるので、ある程度腕を前に伸ばす必要があります。
攻めてる時は集中して忘れちゃうけど、のんびり走る時に何時間も腕を上げっ放しというのは疲れるもんです。
モンキーの新型125ccのポジションは他のバイクよりはイイ線いってるんですが、50と比べるとシートとステップとハンドルを結ぶ三角形が大きく、足も少しは踏ん張らないといけないので、50のポジション程には脱力出来ません。
ハンドルが近いと腕を下げていられます。
シート・ハンドル・ステップの三角形が小さ過ぎても必要な時に踏ん張りが効かないので、125の車格と車重を考えると125には合ってるポジションだと思います。
50の場合は踏ん張れなくてもコントロール出来る程軽いので50のポジションがちょっと特殊なんでしょうね。
実際の車重以上に軽く感じる理由
50の場合、タイヤが8インチな上にサスペンションが有って無いようなもんなので衝撃吸収性能は低いですが、タイヤのジャイロ効果が少なく、切り返しの軽さはどんなバイクより軽く感じます。
それは直進時に体幹の微調整だけでバランス修正できるという事でもあります。ここまで軽いと走行中に完全にリラックス出来ます。
ポジションだけ楽でも重いバイクだとこれは出来ません。
これにはエンジンも貢献しています。横型エンジンなので高い所に重い物がありません。8インチによる車高の低さも相まって重心が低いので、実際の車重以上に軽く感じます。
足を着かなくてもUターンでフラフラしたり立ちゴケする事はまずありません。
更には、濡れた白線やマンホールで滑っても簡単に足で支えられるので、そうそう転ぶ事もありません。
低重心と軽さのお陰です。これが気楽さや安心感にも繋がっています。
だから、ごちゃごちゃした下町をちょっと散歩してみようという気になるし、自然の多い所なら少し脇道を探検してみよう、広い道をのんびりと何処までも走ってみよう、という気分になります。
ぶつけた時も頑丈
ポジションが楽で軽くて小さいからこそ、意外と頑丈です。コケてもぶつけても壊れないという意味です。
私自身が20数年かけて数えきれない転倒(前転・滑落含む)と2度の事故で不本意ながら実証済みです。
前カゴは曲がりますが、メインフレームは歪みもありません。軽い事に併せて小さいので結果的に応力が掛かり難いんでしょうね。
折り畳みハンドル
そしてスーパーカブ系列の横型エンジンは故障の心配は少ないです。とは言え機械なのでいつかは壊れます。
本当に走れなくなっても折り畳みハンドルのお陰でトランポでは無い普通の車に載せられます。
ボックス外して前カゴとミラーを取れば子供用自転車より小さくなります。モトコンポには負けますが(^^)
コーナリング性能
そしてモンキーには意外なスポーツ性能があります。カリカリチューニングのモンキーじゃなくてノーマルのモンキーで、です。
何処にでもあるような時速5キロとか10キロとかで曲がるような超低速コーナー。または普通の交差点みたいな所を曲がる時、歩くような速度まで減速すると思います。
そんな時、大きなバイクの場合、重心が高く、操安性も中高速コーナーに合わせてステアリングが切れるようなジオメトリーになってるので、普段からジムカーナでもやってない限り、超低速では怖くてバイクを深く寝かせたり出来ません。
ところが、モンキーなら出来るんです。
普通のバイクよりホイールベースが極端に短く、重心の低さもスーパーカブ以上!そして極低速で粘るエンジン。
これらの特徴は低速コーナーで有利になります。モンキーって以外とジムカーナで速いんですよ。ただし、直線の少ないコース限定で(TT)
ショートホイールベースと軽量の恩恵で定常旋回速度が異常に速いんです。
モンキーなら、時速5~10キロのコーナーでステップを擦るまで寝かせる事が出来ます。それも安定して。
ステップを擦る時「ワザとじゃないのか?」と思ってしまう可倒式のステップ。
固定式のステップだとカブやエイプみたいにステップゴムが路面に引っかかって怖い思いをする所ですが、
モンキーの可倒式ステップなら、ステップを擦ってもステップからカリカリ音が聞こえるだけで安定してトラクション旋回を続けます。
わざわざ2時間かけてワインディングまで出掛けなくても、近所でコーナリングを楽しめるのは、この粘るエンジンと車体のジオメトリーの恩恵です。
もし突然、障害物が出現しても超低速ならその場で止まれます。これが40~50キロ出るようなコーナーなら、そうは行きません。
もし単独転倒だとしても、速度が上がれば修理代も上がります。
近所で遊べるという事は、せっかく買ったバイクを週末しか楽しめないか、毎日楽しめるのか、という差です。
ウイリー練習に適してる
そしてモンキーはウィリーの練習も簡単です。ウィリーの練習でコケるパターンで1番痛いのはバク転です。
左右にはコケません。足着けるから。モンキーなら他に類を見ない足付き性のお陰でバク転もしません。ウィリー状態での足付き性の話です。
短いホイールベースのお陰でバイクがフロントアップした状態での足付き性がメチャクチャ良いんです。
しかもモンキーの1速で出る程度の速度なのでフロントが上がり過ぎて捲れても、バイクだけどっか行っちゃうような速度は出ません。
まとめ
- 低速ウイリー
- ジムカーナ
- 極低速コーナリング
- トコトコ散歩
- 合法な最高速アタック(黄ナンバーの場合)
これがモンキーの得意分野です。
近所で手軽に安全に楽しめる!その気になれば遠出も出来る。(日本一周してる人もいますね)
こんなに万能なコスパの高いバイクを他に知りません。タイトルに書いた自由とは、私が感じたこのバイクの感想です。
色々な遊び方が出来る(何でも出来る)=自由という意味です。
モンキー・カブが出てくる小説
小説スーパーカブは主人公が女子高生ですが、この「大島サイクル営業中」の主人公は中年のオッサンです。
私もオッサンなので感情移入しやすいという意味で「大島サイクル」の方が面白いと思いました。
モンキーやカブの純正流用チューンのネタも私の趣味にドンピシャです。
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